「時のないホテル」「昨晩お会いしましょう」「REINCARNATION」──
松任谷由実はその53年にわたる音楽活動のなかで、“時間”という不可視の存在を幾度となく描き出してきました。「卒業写真」では過去と現在が静かに重なり合い、懐かしさと切なさが交錯するように、ユーミンの楽曲には常に“時空”の層が織り込まれています。時空における情緒の探究は、まさにユーミンのライフワークと言えます。
そして2025年。ユーミンの挑戦はまだ続きます。
40作目のアルバム『Wormhole』(ワームホール)では、あえて“Yumi AraI”名義を使用。
それは、デビュー時の「荒井由実」としての原点に立ち返ると同時に、“AI”=人工知能という新時代の意識をも暗示する象徴的な示唆です。
このアルバムは“荒井由実”から“松任谷由実”へと続く膨大な時間の蓄積と、その“集大成”でもあります。
AIは目的ではなくあくまで手段。
どんなにAIが進化しても“ゼロイチ”を作るのは人間。
AIを使いこなすには自己のフィジカル、知性も同時に鍛え上げなければいけない。
“AIと人間との共生”という人類の大きなテーマにも、今作は真正面から向き合っています。
「Wormhole」とは“異次元を繋ぐトンネル”という意味。
その実現のために導入されたのが全く新しい制作手法、
“Chrono Recording System(クロノ・レコーディング・システム)”です。
それは、「荒井由実」時代から「松任谷由実」まで、各時代の声をSynthesizer Vという音声合成ソフトにラーニングさせ、すべての時間軸が融合した“新しい声”を生成する技術のこと。
新たなレコーディングアートとも言える制作手法で、過去と未来の声が同時に存在するような、まさに“ワームホール的体験”をもたらします。
“時間”とは何か?
それは、記憶であり、予感であり、変化そのもの。
記憶、変化、そして再構成される意識。
ユーミンだからこそ紡ぐことができた、時空の交差点。
ユーミンが語る“時の本質”がここにあります。
違う自分、新しい自分に出会うこと。
ある時は懐かしく、ある時は新しく。
このアルバムを聴く人は、それらが入り混じった未知の感動を覚えるでしょう。
それを人は“名盤”と呼びます。
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